遺伝性血管性浮腫(HAE)の情報サイト「腫れ・腹痛ナビ」
遺伝性血管性浮腫(HAE)について

HAEとは

監修:福岡市民病院 院長 堀内 孝彦先生

HAEって何?

「血管性浮腫」は、血管が腫れるわけではなく、腫れるのは皮膚や粘膜です。
それではなぜ血管性というのかというと、“血管の変化が原因の浮腫(腫れやむくみ)”だからです。
皮膚や粘膜の下で、血液中の水分が血管の外へ浸み出しやすくなって(図1)、余分な水分が溜まり、浮腫が起こります。

血管性浮腫のうち、生まれつき(遺伝的に)、体内にあるタンパク質のC1シーワンインヒビターの量が少なかったり、働きが弱かったりすることが原因の浮腫を、「遺伝性血管性浮腫(いでんせいけっかんせいふしゅ)(Hereditary angioedema:HAE)」と呼びます。
⇒くわしくは、HAEによる浮腫の直接的な原因はブラジキニン

図1 血管性浮腫の原因となる血管の変化
血管性浮腫の原因となる血管の変化

HAEの患者数

日本で診断・治療中の患者は約430名程度*1いるという報告があります。
患者さんは人口の5万人に1人の割合でいると海外のデータではいわれています。
これから計算すると、日本にはおよそ2,500人の患者さんがいると推測されます。
もしかしたら、まだ診断されていない患者さんが多くいるかもしれません。

※1
大澤勲編:難病遺伝性血管性浮腫 HAE 医薬ジャーナル社

HAEの症状

遺伝性血管性浮腫(HAE)は、急に皮膚や粘膜が腫れたりむくんだりする病気です。
腫れやむくみは全身のあらゆる場所に生じます(図2)。
多くは皮膚と消化管に起こります。

皮膚の場合は顔面やくちびる、手足、腕、脚などに、かゆみのない腫れが起こります。

消化管が腫れると激しい腹痛が起こることがあり、また、吐き気や嘔吐、下痢もみられることがあります。

多くの場合、症状は数日で消えるといわれています。
しかし、のどが腫れると呼吸困難になったり、窒息したりすることがありますので、のどがつまる感じや息苦しさを感じる場合など、症状に応じて、直ちに救急車を呼んでください。

精神的ストレスや過労などの肉体的ストレス、ケガや抜歯などの歯科治療、妊娠や生理、使用している薬などが、発作の引き金となることが知られています。

くり返す
腫れ・むくみ、痛みの症状を
セルフチェックできます。
図2 遺伝性血管性浮腫(HAE)にみられる症状
図3 日本人HAE患者における発作の頻度

遺伝性血管性浮腫(HAE)の腫れや腹痛(発作)はくり返し起こりますが、その頻度もさまざまです。
日本人患者さんでは、1年間に1回も発作が起こらなかった患者さんもいれば、1年間に30回以上も発作が起こる患者さんもいました(図3)。

多くの患者さんで、20歳までに初めての発作が起こります。
ただ、多くの患者さんが遺伝性血管性浮腫(HAE)と正しく診断されないまま長い時間を過ごしています。

図3 遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作の頻度
図3 遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作の頻度